味菜自然豚

豚達の健康、幸せを思い、育てる。「家畜福祉」、英語で「Animal Welfare(アニマルウェルフェア)」という言葉があります。

これは、家畜を飼育する際にも、できる限りストレスを与えないようにしようという考え方で、ヨーロッパではすでに当たり前になりつつあります。

私は、長くこの言葉を知らずに、養豚をしてきましたが、当初から心の中にあった考えと近いのかなと感じます。 人が生きていく上で必要な、健康で美味しい肉を生産すること。これが私たちの仕事ですが、 私たちに命をくれる豚達の命も大切にしたい。 生きている間は幸せに、ストレスなく、健康に過ごしてほしい。

そして、その命に感謝していただきたい。 味菜自然村では、できる限り自然に近い、動物らしい暮らしができるよう、放牧というスタイルを選んでいます。

食べ物(えさ)

手作りの乳酸発酵ごはん。毎日地域の病院や福祉施設から回収してきた野菜くずや、作り過ぎて余ったごはんに砕米を加えて一晩炊き上げます。その後、植物性の乳酸菌を加え3~4日置くと、豚達の大好きな主食、乳酸発酵ごはんの出来上がり。 おやつは、放牧場の草や、木の実、土中の生物や微生物、ミネラルを自分達で探して食べています。これらの心身ともに満たされた食事は、豚達の腸内環境を整え、免疫力を高めます。その結果、抗生剤などの投薬や、過度な殺菌消毒、*ワクチンに頼らずとも病気に負けない健康な豚に育ちます。

※2023年9月、九州全県で豚熱のワクチン接種がはじまりました。味菜自然豚には、引き続き「豚熱」以外のワクチン接種はしておりません。

ストレスフリー

豚にも、自然にも、ストレスをかけない。自然のサイクルを活用した養豚を目指しています。 放牧地は敷地内に14か所。その半分に豚を放ち、残りは土地を休ませ、草などの自然環境を回復させます。1か所あたりの広さは1~2反または4~5反。そこに兄弟姉妹を7~8頭放牧。とてもゆったりした環境です。 豚達は放牧場を自由に動き回るので運動量が多く、なかなか大きくなりません。そのうえ、主食はローカロリーな乳酸発酵ごはん。出荷サイズになるまで通常の養豚場の倍の時間を要します。それでも、早く太らせるのではなく、健やかに育つことを大切にしています。 また、毎日発酵食を食べた豚の糞は分解が早く、すぐ土に還ります。 プラネタリーヘルス※という考え方がありますが、健やかな自然環境で育った健やかな動植物の命をいただくことが、人の健康にも繋がっていると思っています。過度の肉食は望ましくありませんが、人が健康に生きていくのに必要な量の良質なたんぱく質、脂質を考えて選び、摂り入れることが大切だと思います。

※プラネタリーヘルス(長崎大学HPより抜粋) 長崎大学では、プラネタリーヘルスとは「地球の健康」を支え続けるために有効な「答え(解決策)」を探求し、私たち自身の意識変容、行動変容を促す取組みのことだと考えています。

自然な出産と子育て

母子の大切な時を守る。味菜自然豚の出産は自然分娩。基本、私たちが手を貸すことはありません。母豚のストレスを考えて、※ストールフリー(妊娠・分娩ストールとも)で見守ってきましたが、両ストールとも導入していない養豚場は世界的に稀のようです。 出産後、2~3か月は母子一緒に広い豚舎で過ごし、しっかり母乳を与え育ててから放牧します。 人と同じように、長い間母乳を飲むことで、母豚の抵抗力をそのまま受け継ぎ、より健康に育ちます。

※ストールとは、母豚を個別に囲う狭い柵のことです。限られた面積で、より多くの頭数飼育が可能になり、喧嘩や授乳期の子豚の圧死を予防できるため、国際的にも日本国内でも多くの養豚場で使用されています。

品種について

大切なのは、環境とごはん。味菜自然村には、いろんな種の豚達がいます。それは、健康で美味しい豚肉は、品種ではなく、「育った環境」と「食物」で決まると考えているからです。2015年からは、現在の日本においては、その生産効率の悪さから希少種となってしまった、中ヨークシャー種も仲間に加え、飼育、繁殖に挑戦しています。